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ブラック企業で働くのは避けたい。誰もが思うことですが、ブラック企業の定義をご存じですか?給料が低い、休みが少ない、残業が多い=ブラック企業だといえるのでしょうか。曖昧な定義の言葉なので、一度整理して考えてみましょう。

ブラック企業の見分け方

ブラック企業の見分け方

第30回(2013年)の流行語大賞においても、ベスト10入りした「ブラック企業」という言葉。非常にネガティブな言葉として用いられ、多くの人が「ブラック企業」で働きたくないと思っています。「もしかして…ウチもブラック企業?」と悩んでいる人もいるかもしれません。自分の会社がブラック企業だと感じて転職活動を始める人や、転職先を探す際に「ブラックじゃない会社はどこだ?」と思っている人も多いとか。

流行語になるほど有名になったブラック企業という言葉ですが、その定義を正確に語れる人は少ないように感じます。そもそも、明確・正確な定義がないため、自分に合わない会社のことを「ブラック企業だ」と決めつけている部分がありそうですね。

ということでこの機会に、ブラック企業について考えてみます。あなたの会社はブラックですか?それともホワイト?はたまたグレーなのか。

■長時間労働はブラック企業の基準?

冒頭で紹介した流行語大賞のベスト10入りの表彰を受けた『ブラック企業対策プロジェクト共同代表でNPO法人POSSE代表の今野晴貴さん』によると、異常な長時間労働を強いる、パワハラ(パワーハラスメント)が行なわれるなど、劣悪な労働条件を強制し、従業員を酷使する会社と定義されています。そのような会社は離職率が高く、過労による問題が起きやすいそうです。また新卒・若手を大量に採用し、使いつぶして利益を上げて急成長している新興産業の大企業も該当するとされています。

確かに、身体を壊すような働き方を強いる、もしくは体調を崩しても適切な対応をさせない会社は、劣悪な労働環境といえるかもしれません。どのような人にでも体調を崩すことは起こり得ます。そんなときにきちんと休養が取れるかどうかは、ブラック企業うんぬんの前に、使用者としての義務を果たしていないと言えますね。

ただし上記だけでは、長時間労働の定義がまだ曖昧かもしれません。週に40時間以上の勤務は長時間労働にあたるのでしょうか。週に60時間(完全週休2日制であれば、毎日12時間の勤務)だったらブラック企業?

企業の成長フェーズによっては、9時に出社して22時まで働くこともあるでしょう。ときにそれは、働く人を成長させるチャンスになります。仕事が楽しくて、ついつい遅くまで働いてしまう人もいますし、そういう人は自らの会社を「ブラック企業だ」とは思わないかもしれません。

もちろん、毎日12時間の労働で、「土曜も日曜も出社しなくてはならない」という状態であれば、ブラック企業以前に労働基準法違反にあたる可能性があります。休みなく毎日12時間働き続けるというのは、人によって差はあれど、いつか体調を壊してしまうでしょう。適度な息抜きや適切な休暇は絶対に必要です。特に社会人として働く期間は、数十年におよびます。短距離走ではなくマラソンですので、常に全力疾走は不可能。労働時間や残業時間だけで判断するのではなく、本人がどう思っているか、体調を崩すことなく働き続けられるかはポイントになりそうです。

■新卒・若手を大量に採用して急成長中の会社はブラック企業?

伸び盛りのビジネスを手がけ、急成長を遂げる会社があります。中には若手社員を大量に雇って、週40時間以上の勤務をさせている場合も。ではこれらの企業をすべて「ブラック企業」と呼んで非難の対象にしていいのでしょうか。
パワハラ上司は怖いよ
先に挙げたように、あまりに無理な労働を強いる場合は別ですが、ある程度の労働時間や厳しい目標を課していても、それらの企業がなくなることは良いこととはいえません。多くの若者が正社員として働く先になっていることからもわかるように、これらの企業がなければ労働者の受け皿が減ってしまうことは明らか。すべての成長企業を一律でブラック企業と決めて事業を継続しにくくしまうことは、若者をはじめとする労働者にとっても不利益があると考えられます。

新興企業であれば多少の荒っぽさは目をつむりつつ、度を超えた重労働を課していないかをチェックする。そうでなければ、グローバル競争の中で戦える日本企業が育たなくなるという危惧もあります。また、多少のハードワークがあるからこそ、社会人として鍛えられるという一面も。

ここでもやはり、「適度」と「過剰」の線引きが必要です。

■ブラック企業の歴史

ブラック企業という言葉が社会に浸透したきっかけのひとつとして、2009年に放映された映画「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない 」が挙げられます。その前後から、世の中で「ブラック企業」という言葉が盛んに登場するようになりました。ここで一度、「ブラック企業」という言葉が生まれた背景と、時代ごとの労働環境についてまとめてみます。

□2000年~2008年
→若者の雇用問題が広がる。
非正規雇用「フリーター」「ニート」などの言葉が流行。働く意欲を失った若者の問題が取りざたされる。

□2008年~2009年
→リーマンショック:年越し派遣村問題
非正規雇用の実態が報道されたことで、若者自身の問題という捉え方から、企業側が非正規雇用に対して若者を使い捨てているという問題に変化した。非正規は不安定→正規雇用が重要という風潮が社会的風潮になる。

□2009年~2011年
→映画「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」の放映。
長時間労働、パワーハラスメントという問題がブラック企業という言葉で社会的に広がっていく。一部の企業、学生、社会人のなかでブラック企業という言葉が流行。テレビなどでも特集を組まれることが増えていく。

□2011年~2013年
→政府、大学、学生にとってブラック企業=悪という認知が広がりつつある。

注目したいのは、2009年頃と現在では、ブラック企業の定義に変化が生じていること。2009年当時の定義として、以下のようにまとめてみます。

■何日も徹夜が続くことがある
■必要経費が一切認められず自腹
■社員に情緒不安定者が多い
■週一回は「こんな会社辞めてやる!」という社員が多い
※当時は、労基を守らない非常に劣悪な環境で働く会社のみがブラックとされていた。

現在の定義としては、今野晴貴さん(NPO法人POSSE代表)の言葉にもあったように、以下がポイントとなっているようです。

■大量採用、大量離職
■新興成長産業で、破竹の勢いで業績を伸ばしている企業
■利益の最大化のために、若者を食いつぶしている。

現在で認識されているブラック企業の基準をもう少しまとめると、選別(大量採に採用したうえで「使える」者だけを残す)をしている、使い捨て(若者の心身を摩耗し、働くことができなくなるまでの過酷な労働を強いる)、無秩序(パワハラ、セクハラなどが行われ、労務管理がまったく機能していない)であることが定義になっているようです。

■中小企業=ブラック企業?

世間の声を聞くと、「給与が低い」「福利厚生が整っていない」などもブラック企業の定義に入る場合があります。いわゆる大手企業以外では、給与が高くないことも福利厚生が整っていないことも珍しくありません。では中小企業はブラック企業なのでしょうか。景気が良くなり売り手市場になると、待遇条件の低い会社が転職先として敬遠されがち。大手企業と比較して様々なものが未整備のため、ややもすると「ブラック?」と思われることもあります。
ブラック企業じゃないよ
しかし日本の企業の99.7%が中小企業であることから、「中小企業=ブラック企業」としてしまうと、日本のほとんどがブラック企業ということに。では日本の労働者の99.7%が「自分はブラック企業で働いている」と思うかというと、そんなことはありませんよね。

大手企業と比較して待遇が低くても、多少労働時間が長くても、やりがいを感じて働いている人がたくさんいます。また多くの中小企業は、問題点を認識しながら改善に努めています。「いまは給料が低いけど」「勝負所だから残業時間が増えてしまう」と思いながら、企業が成長することで問題を解決しようとしているわけです。

■ブラック企業の定義は、まだ、ない。

結局、「ブラック企業はここだ」と決めることはできません。この転職大辞典で明確な定義をすることも難しいです。大事なのは、「働き続けられないほどの負担」がなく、「自らの成長につながる仕事、経験をつめているか」ではないでしょうか。特に若手であれば、社会人になって数年で、その先にある長い社会人生活の基礎が出来上がってしまいます。この間に自分を高められる会社であれば、少々の残業があっても納得できる人は多いはず。「ブラック企業」の定義をみつけるよりも、持続的に成長でき、働き続けられる環境を見つけることが大事だと思います。

ただひとつ。最後にこれだけは言えます。どんなに給料が良かろうが、他人に自慢できる仕事内容・企業名であっても、身体を壊してまで続ける仕事・会社はありません。

※2014年6月24日現在
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