自己都合退職、会社都合退職の違い|知らぬは損?それぞれの退職メリット・デメリットとは?
退職には、「自己都合退職」と「会社都合退職」の2パターンがあることをご存知ですか? なんとなく聞き覚えがあっても、具体的に何が違うかまでは知らない方も多いかもしれません。
たとえば、失業後にもらえる失業給付金の額や給付期間、退職金がもらえる際の支給額などにも差があるのです。そこで今回は、自己都合退職と会社都合退職の違いや、メリット・デメリットについてご紹介します。退職時の確認事項や失業給付金についても詳しくご説明。「今すぐ退職を検討しているわけではない」という場合でも、知っておいて損はありません。これを機に、ぜひ正しく理解をしておきましょう。
目次
1.「自己都合退職」「会社都合退職」の違いとは?
「自己都合退職」と「会社都合退職」の違いは、退職の理由によります。
「自己都合退職」は、希望して退職するケース
一般的に、多くの退職が自己都合退職に当てはまります。転居・結婚・介護・病気療養のための退職はもちろん、自分が望む仕事内容・待遇などを求めて転職する場合も、自己都合退職です。
「会社都合退職」は、退職を余儀なくされるケース
経営破たんや業績悪化に伴う人員整理により、一方的に労働契約を解除される場合が一般的です。加えて、退職勧奨・希望退職に応じた場合や、勤務地移転に伴い通勤が困難になった場合、何らかのハラスメント被害を受けた場合など、自分の意志に反して退職を余儀なくされたケースも当てはまります。
※一般的には、下記のような理由で離職した場合が当てはまります。
- 倒産や、大量のリストラ
- 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く
- 職場の上司・同僚等から、いじめや嫌がらせを受けた
- 勤務場所や勤務時間、賃金・職種などが労働契約締結時に明示されたものと著しく違っていた
- 賃金が大幅に減らされた又は未払いが続いた
- 会社から、退職するように促される“退職勧奨”を受けた
(この場合、早期退職優遇制度等に応募して離職した場合は含まれません) - 当該労働契約が更新されない事態になってしまった
なお、懲戒処分の対象となる問題を起こして免職・解雇となったケースは「自己都合退職」の扱いです。ただし、退職させられる理由に納得できず、不当な懲戒処分の可能性が考えられる場合には、企業側に詳しい説明を求めるようにしましょう。
2.「自己都合退職」のメリット・デメリット
自己都合退職か会社都合退職かによって、退職後に異なることは主に3つ。
①履歴書の記載内容、②失業給付金の給付内容、③退職金の支給内容です。
この観点から、自己都合退職と会社都合退職を比較したメリット・デメリットをご紹介します。
自己都合退職のメリット
自己都合退職の場合、履歴書の退職理由は「一身上の都合」として記載するだけで問題ありません。転職活動においては、転職回数が極端に多い・在職期間が極端に短いといったことがない限り、退職理由を深く追及はされない点がメリットでしょう。
自己都合退職のデメリット
失業給付金の支給を受けるまで、3ヶ月の「給付制限」があります。加えて、ハローワークへの申請を経て、最低でも待機期間として7日間は待つ必要があり、どんなに早くても「3ヶ月と7日後」からの支給となります。また、会社都合退職と比較すると額が少なく、給付期間も短くなります。なお、退職金を支給している企業においては、自己都合退職の場合は会社都合退職よりも退職金が減額されるケースがほとんどです。詳細は、就業規則を確認するようにしてください。
失業給付金の制限が免除される自己都合退職
一般的な例をご紹介しましたが、同じ自己都合退職でも、理由によっては、「特定理由離職者」として給付制限が免除される特殊なケースがあります。また、会社都合退職と同様に、給付日数が長くなったり、国民健康保険料が軽減される場合もあります。下記はその一例です。
- 親の死亡によって家庭状況の急変した場合
- 30日以上の長期間にわたる家族への看護や介護を行っていた場合
- 結婚や事業所の移転などにより、往復の通勤時間が4時間以上となり通勤が難しくなった場合
- 医師の判断で退職したほうが良いとアドバイスされていた場合
実際に「特定理由離職者」認められるかどうかは、個別の事例によって異なります。また、「特定理由離職者」として認められる場合には必要書類の提出が求められますので、詳細についてはハローワークでご相談ください。
3.「会社都合退職」のメリット・デメリット
では、会社都合退職のメリット・デメリットをご紹介します。
会社都合退職のメリット
失業給付金の支給を受けるまで早いというメリットがあります。自己都合退職の項では、失業給付金まで3ヶ月の「給付制限」があると書きましたが、会社都合退職では「給付制限」期間がありません。
ハローワークへの申請を経て、最低7日間の待機期間のみで、失業給付金を取得できます。
会社都合退職の場合は、失業給付金の金額が多く、また給付期間も最大330日と長いことがメリットです。
会社都合退職のデメリット
転職活動において質問される事項が増える可能性がある、という点が挙げられます。
履歴書等で、「会社都合による退職」と記載があった場合、面接官の確認が増えることになります。会社が倒産したなど、自身の理由ではない場合はそこまで追求はされませんが、「解雇」の場合はその理由を深く聞かれることが多いでしょう。就労時に問題を起こしていないか、トラブルがなかったか、業績は?…と質問される可能性もあります。自己都合退職と比べて、より慎重に書類・面接対策を練っておく必要があります。
なかには「失業給付手当をすぐにもらいたい」という目的だけで、会社側にさまざまな理由をつけて会社都合退職にしようとする人もいますが、転職活動への影響を考えると賢明ではありません。一度でも会社都合退職をすると、「会社都合退職」の文字はいつまでも経歴上につきまとってしまうことを肝に銘じておきましょう。
4.「自己都合退職」の際に準備すること
「自己都合退職」の確認事項
自己都合退職をする場合にも、できる限り円満に退職をしたいとお考えかと思います。そのために準備をしたいこと、確認しておきたいことをまとめました。転職活動や転職先への入社時期もふまえて、しっかりと「退職までのスケジュール」を立てて行動することが大切です。
まずは「就業規則」を確認して退職申告
民法では、雇用期間の定めのない社員はいつ退職を申し出ても問題ないと定められています。ただ、会社の就業規則に則って申告をすることが一般的です。まずは、就業規則で「いつまでに・誰に・退職の意志を伝えるべきか」を確認しましょう。
どんなに早くても退職は申告の2週間後
民法第627条第1項の定めでは、退職申告後の原則2週間後には退職が可能です。とはいえ、後任担当者への業務の引き継ぎなどが発生しますので、退職の1~2ヶ月前には申し出るのが適切でしょう。業務の引き継ぎができるのは、会社側に退職を受理されてからです。退職を考えてからは、退職までのスケジュールは早めに立てることをお薦めします。
退職届・退職願は書面で提出を
こちらも、就業規則の確認が必須です。場合によっては、会社が定める所定の書類を提出しなくてはならないケースもあります。なお、「退職願」は「退職を願い出る書類」ですので、退職の意思を撤回することができます。一方で「退職届」は「○月○日付で退職します」という意志を表明するもので、受理をされた後は原則撤回できませんのでご注意ください。また、書面の内容はあくまで形式的なものなので、退職理由は「一身上の都合により退職致します」と書くだけで問題ありません。
退職前の有給休暇取得は早めに申請
多くの場合、たまった有休を退職前に消化することができます。ただし、退職直前になってから有休消化を申請した場合には、認められないこともあるでしょう。引き継ぎの都合や有休の残日数もあわせて申請をしましょう。
健康保険・年金の手続きも忘れずに
退職後には、健康保険や国民年金などの加入手続きが必要になるケースが多いです。退職前には、健康保険証のコピーを取る、年金手帳が手元にあるか確認する、といったことを忘れずに行ないましょう。退職後にどのような手続きが必要になるか、あらかじめ会社や自治体に確認しておくと万全です。
退職金をもらえる場合には要チェック
会社の給与担当者に「退職所得の受給に関する申告書」を提出することをお忘れなく。退職金をもらえる場合、この申告書の提出を忘れると、自分で退職金の確定申告を行なわなければなりません。詳細は給与担当者にご確認ください。
5. 会社都合退職なのに、自己都合退職にしてほしいと言われたら?
会社から、「会社都合ではなく自己都合での退職にしてほしい」と言われた…。そんな声を聞くこともよくあります。背景には、会社側が、会社都合で退職されてしまうと、厚生労働省からの助成金をもらえなくなるという事情があるのです。
そもそも助成金とは、労働者の生活の安定や健康維持を目的に助成されるもの。会社都合での退職は、生活の安定などとは真逆の事態ですから、助成金の意にそぐいません。
そのため、雇用者は助成金を受け取ろうと、「経歴に傷がつく」「今後の就職活動に影響が出る」などと言って、自己都合退職を促すケースも多いのです。とはいえ、自己都合退職とされる理由はまったくないので、それを望まないのであればきっぱり断りましょう。
自己都合退職を、会社都合退職にできる場合とは?
自己都合退職には、「特定理由離職者」という枠があります。これに該当すると、
給付制限や最大給付日数などで優遇されるようになっているのです。認められる理由はさまざまで、例えば…
◎労働契約が満了、かつ労働契約の更新がないことによって離職した人
◎病気や心身の障害によって離職した人
◎妊娠・出産・育児等を理由として離職し、受給期間延長措置を受けた人
◎結婚に伴って住所を変更した人
◎事業所が通勤困難な場所に移転した人
…などがあります。
(これらは一例ですので、詳しくはハローワークのページも参考にしてみてください)
また、退職時に自己都合退職として扱われていても、のちにハローワークで会社都合退職だと認められるケースもあり、その場合は「会社都合退職」に変更可能です。例えば、「残業時間が長すぎる」「給料の減額、未払い」「採用時の条件と実際の労働条件が異なる」「セクハラ、パワハラなどのハラスメント」などが該当します。
自己都合退職を会社都合退職に変更したい場合は、その“証拠”がないと、会社側は自己都合退職として処理しがち。そのため、例えば残業時間ならタイムカードのコピー、ハラスメントならボイスレコーダーのデータなど、証拠を確保しておきましょう。
6.「失業給付金」について
失業給付金と失業保険の違い
「失業給付金」よりも「失業保険という言葉のほうが馴染みがあるかもしれません。実は、この3つは全て同じもの。ただ、失業保険や失業手当といった言葉は公的には使われていません。世間で「失業保険」と呼ばれているのは、雇用保険制度において失業後に給付される基本手当のことです。
この給付金を受給することにより、生活の不安なく求職活動が取り組めるようになります。会社を退職して次の就職先が決まっていない状態の一定期間、転職や再就職を支援するために国から給付される手当である、ということを理解しておきましょう。
失業給付金の受け取るための条件
失業給付金を受け取るための最低限の条件は、次の2つです。
雇用保険被保険者として、離職日から遡って2年の間に最低12ヶ月以上働いた期間があること
こちらは、一般的な自己都合退職の場合な条件。会社都合退職の場合や、「特定理由離職者」の場合は、離職日から遡って1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも構いません。
ハローワークにて求職の申し込みを行ない、再就職の意思・能力があるのに就職できない状態であること
注意をしたいのは「職に就いていない=失業」ではないということです。求職活動を行なっている状態でなければ、失業給付金を受給することはできません。具体的には、下記のようなケースでは「失業している状態にある」と認められる対象外となります。
- 既に次の就職先が決まっている
- 副業などによる別の収入がある
- 就職ではなく起業をする準備がある
- 求職活動はせずに休養をする
- 結婚などにより家事に専念する
- 職業訓練を目的としたものではない学業に専念する など
失業給付金の給付額・給付日数など
失業給付金の給付額
給付額を決める要素は、年齢・退職理由・勤続年数です。自己都合退職の場合は、失業給付金の給付額は最大で約118万円。年齢や、離職前に勤めていた会社における退職前6ヶ月間で受け取った給与によって、多少変動する仕組みです。
失業給付金が給付されるまで
なお、失業給付金は退職後すぐに手に入るわけではありません。ハローワークへの申請を経て、最低でも待機期間として7日間は待つ必要があります。加えて、自己都合退職の場合は3ヶ月間の「受給制限」が適用されるため、どんなに早くても「3ヶ月と7日後」からの支給となるのです。
ちなみに、なぜ給付制限があるかというと、「失業手当に依存することを防ぎ、再就職活動を促進すること」が目的とされています。3ヶ月と7日間求職活動をしてもなお就職先が見つからなかった場合、失業給付金を手にすることができるのです。
失業給付金の給付日数
給付日数を決める要素は、退職理由・年齢・勤続年数です。自己都合退職の場合は、90日~150日です。会社都合によって退職を余儀なくされたケースでは、90日~330日となります。この日数は、年齢や、離職前に勤めていた会社への勤続年数と年齢によって変動します。
失業給付金を受け取るための準備物・流れ
失業給付金を受け取るためには、ハローワークへの申込みと、失業給付金の受給申請が必要です。自己都合退職か、会社都合退職かによって手続きの詳細も異なりますので、「いざ申請をする」となった際に慌てないよう、よく確認をしてください。
失業給付金を受け取るための準備物
- 雇用保険被保険者離職票1・2(退職後に会社から受け取れます)
- 写真付きの身分証明書(運転免許証、住民基本台帳カードなど)
- 写真2枚(縦3cm×横5cmの正面上半身、かつ3か月以内に撮影したもの)
- 印鑑
- 本人名義の普通預金通帳
- 個人番号確認書類(マイナンバーカードなど)
失業給付金を受け取るまでの流れ
自己都合退職と会社都合退職のいずれにも共通の部分と、それぞれ異なる部分があります。下記の図がおおまかな流れです。
自己都合退職の場合の特徴は「給付制限」があるだけでなく、支給がスタートしてからも4週間ごとに「失業認定」を繰り返す点でしょう。先程ご紹介した通り、失業状態を認められるためには「求職活動をしていること」が最低限の条件となるためです。自動的に振込まれ続けるわけではありませんので、注意が必要です。
失業給付金の制限が免除される自己都合退職
一般的な例をご紹介しましたが、同じ自己都合退職でも、理由によっては、「特定理由離職者」として給付制限が免除される特殊なケースがあります。また、会社都合退職と同様に、給付日数が長くなったり、国民健康保険料が軽減される場合もあります。下記はその一例です。
- 親の死亡によって家庭状況の急変した場合
- 30日以上の長期間にわたる家族への看護や介護を行っていた場合
- 結婚や事業所の移転などにより、往復の通勤時間が4時間以上となり通勤が難しくなった場合
- 医師の判断で退職したほうが良いとアドバイスされていた場合
実際に「特定理由離職者」認められるかどうかは、個別の事例によって異なります。また、「特定理由離職者」として認められる場合には必要書類の提出が求められますので、詳細についてはハローワークでご相談ください。
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