読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

エンジニアHubPowered by エン転職

若手Webエンジニアのための情報メディア

チームは小さく、役割を固めず、クリエイターを全力で応援! ピクシブがこだわる文化の継承とは?

連載「若手エンジニア、どんな活躍してますか?」第7回は、イラストコミュニケーションサービス「pixiv」、コミック総合サービス「pixivコミック」などを運営するピクシブ編です。ピクシブのCTOがリーダー引き継ぎ時に重視したこととは? 詳しく伺いました。

pixiv

若手エンジニアのための情報メディア「エンジニアHub」。連載「若手エンジニア、どんな活躍してますか?」第7回は、イラストコミュニケーションサービス「pixiv」、コミック総合サービス「pixivコミック」などを運営するピクシブ編です。

イラストや創作マンガの描き手を応援する文化を大事にするピクシブでは、チームを小さく保ち壁を作らないことを重視。仕事以外のことに1週間取り組めるルールも。エンジニアが創作同人誌イベントの企業出展を提案して実現? 異色の企業文化の一端に触れてきました。

──自己紹介をお願いします。

佐々木 pixivコミックでエンジニアをしている佐々木佳祐(ささき・けいすけ)です。北海道の高専に通っていたのですが、2010年に上京して電気通信大学に入りました。在学中に、高専OBが集まる勉強会の「高専カンファレンス」に参加して、そこでOBたちと交流ができ、その縁で2012年8月にピクシブでアルバイトを始め、そのまま2014年4月に新卒で入社しました。

もともとオタクっぽいことが好きで、創作をやっている友達もいて。身近な人に喜んでもらえるサービスを作りたいと思って入りました。

pixiv佐々木佳祐さん。大学時代から個人でAndroidアプリを作っていた

髙山 執行役員の髙山温(たかやま・あつし)です。2012年に大学院を中退してピクシブに参加しました。入社後すぐにpixivコミックが始まったため、そこのフロントエンドの開発をし、その後pixiv本体のサーバーサイド開発を経て、pixivチームのリーダーをしました。それからpixivプレミアム会員数やアクティブユーザーなどの数値を伸ばすグロースチームにエンジニアとして参加してリードエンジニアに。2015年10月からpixivのマンガを盛り上げるチームを結成し、リーダーとしてやってきましたが、2016年12月よりその役割を佐々木に引き継ぎました。現在は、CTO(最高技術責任者)をしています。

takayama髙山温さん。2016年12月より執行役員に就任

──佐々木さんはピクシブに入ってからはどんなお仕事を?

佐々木 アルバイトとして入った頃には、Androidアプリを作っていました。もともと大学に入ってから個人でAndroidアプリを作っていて。それが縁でアルバイトに参加し、pixivアプリのUIを改善するところから始めました。当時はAndroid4.0の世代で、要素を並べただけで装飾のなかったpixivアプリのUIをその代っぽくしました。

社員になってすぐは、髙山の指導のもとPHPで社内ツールを作っていました。その後pixivアプリに従事していました。あるとき、社内で「pixivマンガ(当時のサービス名、pixivコミックの前身)を盛り上げたいチーム」が発足して、そこで手を上げたのが髙山だったのですが、私も参加しました。当時は3人ほどの小さなチームでした。

髙山 pixivコミックで目指していたのは、pixivでマンガを発表してプロデビューする人が出てきたので、その発展としてマンガを連載できる場があるといいなと。描き手の方にも、僕らにも、出版社にも可能性が広がる場になるようにしたいと考えてサービスを開発していきました。

開発期間の半分をプロトタイピングに、Android版を先行

──pixivコミックの開発ではどのような挑戦がありましたか?

髙山 新しいアプリのサーバーサイドを作るときに、そのとき自分がけっこう好きだったScalaを使ってみました。新しい試みだから新しいことをやろうと。

アプリの方も、リリースまで4ヶ月と決めて絶対にリリースするぞ、という計画でやりました。しかも、その半分の時間はプロトタイピングに使う。2ヶ月は捨てるコードしか書かない。リリースに持っていけるUI、ユーザー体験はどんなものかを探るために、ものすごいスピードで開発しました。

その後の本番アプリの開発でも、1回書いたことがあるコードなので、素早くきれいに書くことができましたね。

──マルチプラットフォーム対応は大変じゃありませんでしたか?

佐々木 最初はAndroidアプリだけで始めました。iOSアプリと違って審査がないのですぐに出せます。スピード重視でいきました。そこから先が独特で、AndroidのエンジニアがiOSアプリを書き始めました。エンジニアにとっては挑戦でした。

髙山 当時のチームではサーバーサイドが1〜2人、アプリが2人。全員が全部のコードに触れるようにしよう、コードレビューできるようにしようと取り組んでいました。

pixivimage

──それはどんな考えからですか?

髙山 アプリの人はアプリのことは分かるけど、APIはどうあるべきか、APIをどう使うとサーバーの人が困るのか、そこまで考えが及びません。逆に、APIを作る側もどういう形にすると一番いいのかが分からない場合がある。この認識がチーム内で噛み合わないとどんどんスピードが遅くなる。お互いのことを最低限分かるようにと考えました。

全員が全部を把握していると、例えばエラー発生時にAPI側に問題があるのか、アプリ側に問題があるのか、ぱっと切り分けられるようになります。

──チームが大きくなっても、その方針でいくのでしょうか。

髙山 理想はそうありたいですね。それと、大きなチームにはしたくないと思っています。

佐々木 今は自分がチームを見る立場なのですが、自分もそうしていきたいと思っています。チームができた頃から人が入れ替わっていて、髙山もCTOになって直接は参加しなくなりました。当時を知っているメンバーは僕だけです。

pixivコミックは、Webサイト、Androidアプリ、iOSアプリがあって、それぞれにエンジニアがいます。これからもスピードは大事なので、全員が全部を把握する考え方は引き継いでいきます。

突然のリーダー交代では文化の引き継ぎを重視

──佐々木さんが髙山さんからリーダーを引き継いだ頃はいかがでしたか?

佐々木 「来月からリーダーは君ね」と話がおりてきて。最初はリーダーの姿とはどういうものだろうと考える時期がありました。今も考えているんですけど。

もともと髙山がどういう動きをしていたかを掘り起こして。いいところは引き継ぎつつやってます。以前から、「見て覚えろ」みたいなところがありましたので。

髙山 ある意味では、リーダーが変わる前からも、それに今も、引き継ぎをやっていますね。

佐々木 口で「こうやるんだ」みたいな指示はあまりないですね。

pixivimage

──リーダーになってから特に意識して取っている行動はありますか?

佐々木 よく話すこと、です。髙山とも、それに他のチームのRuby on Railsに詳しい人とも話をするようにします。サーバー側の課題があるとき優先すべきことは何なのか、設計はどうするのか、分からないことばかりなので。会社の中が、他のチームにも話を聞きにいける環境にあるのがありがたいですね。

──髙山さん側は、リーダー引き継ぎのときにどんなことを考えていました?

髙山 自分はサーバーサイドを強みとしてやってきたところがあるので、サーバーサイドのエンジニアがプロジェクトを引っ張るやり方はイメージできます。

一方、佐々木はアプリをメインにやってきたエンジニアなので、どういう結果になるのか見えない部分はありました。自分がCTOになる話も突然決まったので、CTOになってからが移行期間だと思って、口を出せる間はたくさん出す形です。

──話ができる風土を大事にしているのですね。

髙山 チーム内で合意の上でやってくれたら大抵のことは文句言わないよ、ということにして、重圧があまりかからないようにしています。

そういえば、アプリ側でずっとやってきた佐々木がサーバーサイドのコードを書いたことがあったんですよ。

佐々木 アプリの人はアプリ、サーバーの人はサーバーだけを見ている状態をなんとかしたいと思っていました。現場でも、お互いのコードを見たいという声があって。自分が率先して、アプリの人だけどサーバー側のRailsのコードをコミットしてみました。

髙山 案の定、レビューではボコボコにされていました。

pixivimage

佐々木 でも、みんなあったかいなと思いました。入社数年目にして新卒っぽいことにチャレンジして、レビューでいろいろ言われることが許される感じが安心できます。

髙山 チームによってやり方はさまざまなんですけど、僕がメインで関わっているチームについては、役割を固めないようにしています。それぞれの人ごとに強みはあるけれども、「あそこは自分の領域ではないから触らない」は排除したい。一つのチームの人数を多くしない、壁を作らない、隣のチームの人とも話す、そういう文化を作っています。

創作するユーザーをリスペクトする

──サービスでこだわっていることはなんですか?

髙山 イラストやマンガを投稿してくれる人へのリスペクトはむちゃくちゃありますね。この会社に入る人は、pixivに投稿してくれる人の活動を応援したいと思って入ってくる。そのリスペクトで動いている。クリエイターを全力で応援しにいく気概の人が多いです。

佐々木 まず投稿者を大事にしようと思ってやっています。

髙山 イラストやマンガを創作して人に見てもらうことが楽しくてやっている人がもっと世の中に増えてほしい。それが第一義としてあって、儲け方は二の次みたいな文化があります。

pixivimage

──エンジニアの方も、そういうサービスを作りたくて入ってくる人が多いのですね。

佐々木 自分もそうです。今度コミティア(創作同人誌の即売会)があるんですけど、そこに「pixivとして出ましょう」と自分で言い出しました。「私たちのやり方で創作を応援しています」と目に見えるところで続けていくことが会社の姿勢として大事じゃないかと。

──ちなみに、コミックマーケット(最大規模の同人誌即売会)は?

佐々木 もう出ています。コミティアの方は創作者のお祭りなので、また空気が違います。

髙山 イベントでは「私も出たいです」と手を挙げてくれる人が毎回10人ぐらいいます。会社の広報活動というより、「面白そうじゃん、やるべきだよね」と。

──クリエイターを応援する姿勢を大事にしているんですね。

髙山 創作に関わる人が今後増えて欲しい、その中で会社としてやれることがある、そう思う人に来て欲しいですね。

幸い、それができるエンジニアばかり入ってきてくれます。新卒でもリスペクトできることをやっている人たちばかりです。彼らを育てるというより、必要なことを身につけてもらって本来の実力を発揮してもらいたい。

──会社の文化が引力になっているんですね。ピクシブは最近、分散SNSマストドンのインスタンス「pawoo.net」を立ちあげて話題になりましたね。

pixivimage画像は「pawoo.net」のスクリーンショット

佐々木 あそこで(オフィスの一角の方を向いて)今まさにマストドンに取り組んでます。突然、社内ドリームチームが結成されました。本業を止めてでもこっちをやりましょう、みたいなノリです。

髙山 そういうムーブメントを作るみたいな、会社として面白いことをやっていきたい思いがあって。それを一緒にやりたいと思う人かどうかが、人を採用する際の決め手になったりします。

仕事以外のことに取り組める1週間ルールを作った

──新卒エンジニアも多いということですが、全体の水準を上げるための取り組みはありますか?

髙山 僕がCTOになってから、取り組みを始めています。例えばペアプログラミングを通して、仕事でおさえないといけない課題を学んでもらっています。

もうひとつの取り組みとして開発基盤チームを作りました。実は作るのは2回目か3回目なんですけど(笑)。この取り組みで、サービス全体をHTTPSにしました。それにPHP7への移行を進めています。機械学習への取り組みもあります。

Railsのバージョンも3年放置してきたプロジェクトがあって、そのバージョンを上げようという取り組みもありました。バージョンが揃っていた方がノウハウ共有もできますから。

pixivimage

──メンターの立場として、日々どんなことを考えていますか?

髙山 若い人にはどんどん成長して欲しいと思っていて、それをできるだけ阻害しないようにしたい。成長の機会、褒められる機会をなるべく作りたい。僕がその機会を絶ってしまわないようにしています。

「コミティアに出たい」と言ってきたら「じゃ、やったら?」と言う。やり遂げたことで、チーム内での立場やできることの幅が広がる。ここで否定するとチャンスがなくなってしまう。

佐々木 そこで止める選択肢はあったんですか?

髙山 ないない(笑)。新しいなにかを始めたいとき、止める意味はない。むしろ成長して先輩達を追い抜いてほしいですね。

──では、口を出すのはどんな局面ですか?

髙山 「そういう考え方は技術的に間違ってる」という場合はあります。

あとは、「1週間ルール」を作ったんですよ。1週間、仕事とは関係がないことをやってもいい。このルールを使ってくれる人が出始めていて。それで作ったものの中には、仕事とは関係がないけれども、なんらかの形で生かせるんじゃない? というものが出てきています。

若い人が自分の力で何かを変えることができると思ったとき、それを阻害しないことが大事だと思っています。

pixivimage

──ありがとうございました。

取材:星暁雄/写真:赤司聡

連載バックナンバー

employment.en-japan.com