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COBOLからPepperまで、35歳定年説を超えてコードを書き続ける20年選手の「こだわらないキャリアパス」

プログラマ・エンジニアとして働いていたら一度は耳にする「35歳定年説」。そんな中、自身でコードを書き一線で活躍している先輩エンジニアに、長年エンジニアの仕事を続けてきて考えていること、心がけなどを語ってもらいました。

プログラマ・エンジニアとして働いていたら一度は耳にするであろう「35歳定年説」。体力面やキャリアを考えたとき、シフトチェンジをせざるを得ないという声も聞く。そんな中、自身でコードを書き一線で活躍している先輩エンジニアも少なくない。今回は40代の先輩エンジニアに、長年エンジニアの仕事を続けてきて考えていることや心がけなどを挙げていただきました。

はじめまして、榊原です。3年前にぐるなびに入社以来、主に新技術を使った開発を担当しています。アプリ開発や人工知能研究、最新技術調査のほか、Pepperに連携させるAPI開発や社内勉強会に携わっています。Pepper関連では、APIや社内向けのPepperのマニュアルに掲載するサンプルプログラムなども作成しています。

Pepper
ぐるなびの受付をするPepper。受付システムは私が作成しました

今回は私の昔話と、エンジニアとして経験を積んだことで得られたメリットなどを書いてみたいと思います。読者である若手エンジニアのみなさんが「○年後の自分の姿」を想像していただいたり、エンジニアとしてどう生きていくかを考えたりする一つのきっかけとなれましたら幸いです。

最新の技術を求めて、人に会いに行くのも仕事

今最も多い仕事が、最新技術の調査です。社内から「今××が流行っているようだが、知らないか」というような依頼を受け、新技術やプロダクトの調査・資料作成をし、社内に知見を広めています。

新しい技術はすぐに使われはしませんが、自分の調査や意見が役立つときがくると考えると嬉しくなります。そうしたこともあり、現在の仕事にもある程度は満足しているものの、自身が調査した新規技術がサービス運用に使われないときは、少し残念だなあと思います。

依頼を受けたもの以外にも、情報を集めるために展示会・イベントに参加(現在は人工知能関連のものによく足を運びます)したり、SNSでコンタクトを取って開発現場に行き、話を聞いたりしています。「会いに行くのは失礼ではないか」と思われる方もいるかもしれませんが、意外と会ってくださるものです。

調査に時間を割くため、実際にプログラミングをしているのは全業務のうち4割ほどでしょうか。20代後半から30歳にかけては業務の8割近くがプログラミングで、残り2割が設計書や仕様書の作成でしたから、だいぶ減ったと言えるでしょう。

データベース、グループウェア、Webサービスと何度も転身

小さい頃、コンピュータでドット絵を描きはじめました。少しずつ触っていくうちに絵を描く以外のこともできると知り、コンピュータの可能性はすごいなと思っていました。中学時代にはマンガで出てきた人工知能に憧れましたが、医学部に進学。「公衆衛生」分野の環境調査の授業でデータベースに出会い、病名や症状を解説するエキスパートシステムを在学中に作ってみたりしていました。

諸事情があり医学部を辞めたあとも、データベースに関わりたいと思いエンジニアの仕事に就きました。今でこそ研究開発が主な仕事ですが、私のエンジニアとしてのキャリアはホストコンピュータから始まりました。

ホストシステムからクライアントサーバ、Web系に転職

最初の会社ではCOBOLを使って経理系のホストシステム開発や、データベースを利用した携帯電話の在庫管理システムの開発(クライアントサーバ)などに携わりました。セールスエンジニアとしてOracleの営業補佐をした時期もあります。顧客からのフィードバックをもとに日本企業向けのローカライズをOracle本社に提案したり、自分でパッチを作って渡したりと貴重な経験が積めました。

8年ほど働いたのちに転職し、法人向けグループウェア・Lotus Notesのシステムコンサルティングを担当します。他社のコンサルに携わる中で、さまざまなWebサービスに興味を惹かれました。2000年当時はWebの黎明期。新しいサービスが生まれていくのを目の当たりにしていたのです。

30代ではWeb系企業に転職。「Webはこれから広まるだろう」と思っていたこともあり、音楽配信や旅行予約サービスなどWebの開発を経験しました。さまざまな分野のプロダクトに関わりましたが、自分の好きな「食」に関するサービスを提供しているぐるなびに入社。前職の経験を生かして飲食店予約システムの開発を手がけたのち、R&Dの事業立ち上げのため現在の開発統括グループ企画調査チームに在籍します。

経験を重ね、勘を養えば、技術への理解も早まる

エンジニアとして働き続けてから24年。社会人になりたてのころと今ではだいぶ仕事内容も異なりますが、経験を重ねて気づけたことがあります。

長年技術開発を続けているうちに、技術トレンドの規則性が見いだせるようになってきました。時代を追うと階層が増えたり、新技術を使ったりして複雑な構造になっているものの、集合と分散を繰り返しているのです。

コンピュータは、ホストコンピュータという大型コンピュータ1台に全データを格納し、システムで引き出すという集合型から始まりました。その後はデータをホストに置きつつも、実行プログラムはクライアントの方に移すという分散型に移ります。いわゆるクライアントサーバシステム(クラサバ)です。Webが一般化してからは急速にWebシステムに切り替わり、Webサーバへの集合が起こりました。これらウェブ上に分散したプログラムをサーバにもう一回戻そうとして、ASPというウェブ型のアプリケーションサーバが登場しています。

集合と分散を繰り返している
技術トレンドの規則性

Webがさまざまなデバイスから利用できるようになり、クラウド、IoTを活用するようになった現代は、分散がトレンドです。

この話をすると、若い方の中には目を丸くされる方もいます。しかし長年技術開発を続けていれば誰でも気づけることです。いま仕事で新技術の調査ができるのは、経験を積んで勘を養えたからかもしれません。若手の技術メンバーとも、技術的な流行の開発方式や言語のほか、テストや新技術などの話をしています。

新しい技術の理解スピードが早くなる

技術の理解スピードも早くなったように感じます。例えば言語。私はこの20年で色々な言語を書いてきました。1社目でCOBOLを扱った後はアセンブラ、SQL文(Oracle)、VB、C言語、LotusScript、Web系に転職してからはJavaやPHP、データベース周辺はMySQLやPostgres(PostgreSQL)、Informixなどです。

言語によっては定義や記述の仕方も全然違います。例えばCOBOLとPythonの文法や構造は似ても似つかない。共通点を探すのが難しいくらいです。しかしプログラミング言語である以上、どちらもif文とループと四則演算など基礎関数から成り立っています。複数の言語を知っていることで、同じ処理関数でも「この言語ではこんな関数になるのだな」といった新しい発見もできますし、最適な関数がないなら自分で作ればいいという発想もできるのではと思います。

言語だけに限りません。新しい技術に触れるときも怖さがなくなり理解が早まりました。

特定の技術にはこだわらず、興味を持ち続けること

気になっている技術や挑戦したい分野もあり、まだまだエンジニアリングへの興味は尽きません。今ではWebエンジニアの求人も多く、エンジニアの数自体も増えています。しかし今後は、コーディングをも人工知能でまかなえる未来が来るでしょう。

パソコンがようやく普及しはじめ、インターネットも整備されていなかった時代とは違い、若いみなさんのまわりではすでに便利なツールやサービスが溢れています。「イチから作らないと困る」状況に立ち会う機会は、そう多くないはずです。これからは既存のものをいかに組み合わせ、いかに短時間で作りあげられるかが求められるのではと思っています。

一つの技術を、ある程度のレベルまで極めることはプロとしてもちろん大切なことです。しかし、特定の技術に固執しすぎて他の技術やツールなどをキャッチアップできないのは良いとは言えないでしょう。

私が今でもコードを書き、技術調査の仕事ができるのは興味を持ち続けられるからで、いわゆるオタク的なところがあるおかげかもしれません。昔から寝ないで3、4日ずっとプログラムを組んでいたり、プログラム上で起こっている問題の解決策を考え続けたり、といったことが楽しいのです。技術やツールに対しても同様です。

今の人工知能では、人間の突発的な発想を再現できません。突発的な発想を引き起こすのは人間の生まれもった「何か」であり、原因そのものやプロセスはまだ論理的には解明されていないのです。ただ人工知能が数年、数十年と経験を積んだら、人間と同等もしくはそれ以上の発想ができるようになるかもしれません。人工知能が何かを「ふっと思い浮かべる」ことができるのか? ということが、一番興味深いと思っている部分です。

「興味を持ち続ける」というとやや抽象的ですが、新しいプロダクトを見て「これは自分でも作れるかな?」と考えてみるのもいいかもしれません。

技術のスペシャリストとしてのキャリアパス

ここまで思うことを書いてきましたが、これからもエンジニアとして働き続けたいと思っています。長年働いたから管理職になるのではなく、技術のスペシャリストとしてコードを書き続けるキャリアパスや、それを評価する仕組みがもっと一般的になればいいのになと思います。

今後も新しい技術や自分たちが想像もし得ない技術がたくさん出てくるでしょう。そのときは、怖がらず試してみてください。皆さんの技術向上を信じています。

執筆者

榊原 孝(さかきばら・たかし)

大学中退後、総合商社の経理系システム開発に従事。その後システムコンサルティングを経て、38歳でWeb系に転職。音楽配信サービスや旅行総合サイトの開発・運営に携わったのち、45歳でぐるなびに入社。Pepperの開発、新規技術調査を行っています。食べること、飲むことが大好きで、知り合いの飲食店も何件かあります。今は安価でおいしいお店を調査中です。