株式会社三輪本店のセレモニースタッフ（故人とご遺族の最期の思い出づくりをお手伝いする仕事です）（882558）の転職・求人情報は掲載を終了しています。

主人が丹精込めて育てた菊の花が、今年も庭いっぱいに咲きました。無口でぶっきらぼうなあの人が、花の前では柔らかい表情を浮かべていたことを思い出します。

そんな主人との別れは、私たち家族を動揺させました。葬儀の準備や参列者への連絡、遺品整理…。慣れない喪主の仕事に追われ、涙を流す暇はありませんでした。

それは、葬儀の打ち合わせをしていたときのこと。葬儀場の方から「故人様の好きだった花で、最期の思い出をつくりましょう」と提案されて、ハッと気づいたんです。大切な人を失った悲しみと目の前の忙しさで、私は大事なことを忘れていました。

主人がいちばん手を掛けて育てていた、真っ白な菊の花。どこにいても見えるように。葬儀場の方は、棺だけでなく、会場のあちこちに飾ってくれました。

出棺のときには参列者のみなさんにも花を供えていただきました。自分の育てた花に埋もれ、家族に囲まれたあの人は、どこか柔らかい表情だった気がします。

――今年も庭いっぱいに咲いた菊の花が、主人との思い出を連れてきてくれました。