祖父江ティーエス株式会社の古紙の検査スタッフ　◎王子製紙グループの会社です。（849901）の転職・求人情報は掲載を終了しています。

犯人は、大量の古紙の中に潜む。一見では、他と同じ古紙に見える。ヤツの目的は、古紙を再生紙へと変える製造工程へ潜入し、完成した紙に"アジサイ"を描くこと。

ヤツが厄介なのは、犯行の慎重さだ。潜入が成功しても、すぐに行動しない。原料となる古紙に紛れ、再生紙へと姿を変えても、まだ大人しいままだ。お菓子や薬の箱、雑誌など、再生紙が製品になると、ようやく描き出す。”アジサイ斑点”と呼ばれる、紫じみた特有のシミを。

落描き犯の正体は、昇華転写紙という特殊なインクを使用した紙。たった1枚でも潜入を許すと、最大100トンの再生紙が無駄になる。潜入前に捕らえなければ、ヤツの犯行は防げないのだ。

捜査は地道だ。1トンずつ固められた古紙のキューブを崩し、目視で探す。白いものは違う。犯人は色付きだ。折り目が少ないものも可能性が低いだろう。クシャクシャしている紙があやしい。100トンもの古紙を確認して、何も見つからないこともある。だが、厄介な落描き犯を捕まえるために、今日も検査スタッフは捜査を続ける。