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整備工場に持ってくと、大抵のメカニックが眉間にしわを寄せちまうバイク。BMWのモーターサイクルは一筋縄じゃいかない。工具もほぼ全て特殊だし仕組みも他と違う。文化も言葉も異なる人と話すような気分だろうね。

オレたちは、全国的にも数少ないBMW専門のメカニック。とりわけ愛知県と埼玉県では指折りの存在なんだ。毎日数多くのバイカーやライダーが訪れるのは、信頼して自分の相棒を預けられるところが、他になかなかないからさ。

バイクは少し調子が狂っただけで大惨事。だから、オレたちに届く一台一台全てに、乗る人の覚悟が委ねられている。全身を機体に密着させてコントロールする乗り物だから、ちょっと手を加えただけでもお客様に分かるし、メカニックそれぞれの個性や信念も伝わる。

だから、お客様が自分の整備したバイクにまたがるとき、一番緊張する。「いい感じだね、ありがとう」と言われて、その日の汗が報われる。自分の両腕が、誰かを遠くへ連れてく足になる。多くの人に必要とされてるってことが、オレたちに工具を掴ませるんだ。